ロルフィングは,特定の技法やスタイルを意味していません。米国コロラド州ボールダーを本拠地とするThe Rolf Institute®によって公式認定されたロルファーから提供される身体的構造統合法(Structural Integration)が,Rolfing®と呼ばれています。

さて,実質的にロルフィングを定義付けるものは何でしょうか? 
ロルフ博士没後,Advanced Rolfing トレーニングをさらに発展させる過程で,The Rolf InstituteのインストラクターであるJeffrey Maitland等は,ロルフィングのエッセンスを5つの根本方針に抽出しまとめました。興味深いことに,この中には筋膜を扱う必要があるというような具体的表現は含まれていません。つまり,どんなテクニックを用いるかは問題ではなく,下の5つの根本方針によって行われるプロセスを指しています。ロルフィングトレーニングのUnit 2の1st week以降,繰り返し扱われる,いわばロルフィングの本質・根本方針が,Principlesです。

以下,5つのPrinciples(根本方針)についてご説明します。

Wholism 

 全体観的に捉える

すべてのPrincipleを相互に結びつけ,総合し統括する原理です。生命の本質である,有機的生命体は自立的に自己を構成する力があり,そのための知性を有しているという概念も含まれます。ロルファー自身が知覚を拡大し,中心を据えたところからワークすることが求められます。

Support

 支持をしっかりさせる

他の技法に比べ,脚/足の支持力を重視します。建築物の基盤をしっかりさせなければ,その上の構造は不安定なものとなってしまいます。基盤がしっかりすることで,構造体自身が上昇する力が働き始めます。例えば,脊柱の側湾の原因の一つに,片側の脚/足の支持が十分でないことが多く観察されます。この場合,しかたなく脊柱側で適応の結果側湾しているわけですから,背骨だけを扱って矯正を試みてもうまくいかないわけです。

Adaptability

 適応能・感応力を引き出す

常に意識をもっていないと,捻挫してしまうような状態から,何も意識せずとも快適に歩行できる方が有利です。また,基盤の支持がしっかりしないと,その上部構造の空間的広がりは得られません。
ターゲットとする部位が変化を受け容れる準備=適応性があるかどうかを見極めながらワークする必要があります。また,まだ変化を受け容れる準備がない抵抗する組織より先に,変化を容易に受け容れてくれる組織からワークする必要があります。受け手の身体の感応性を引き出すには,まずロルファー側が受け手の反応に対し,臨機応変に対処する適応能が求められるのです。 

Palintonic harmony

 空間的広がりとその調和を引き出す

強くどこかを押し込んで,空間を狭めてしまうような技法とは対極にあり,内臓空間を含む全体のスペースが広がるように働きかけます。それが前後左右,上下にくまなく広がる調和が重要です。このPrinciple は,supportとも密接に関係しており,基盤の空間的広がりはより支持する能力を向上させます。さらに,各関節の空間が広がることが,しなやかな動きや連続性にもつながり,Adaptabilityも向上します。

Closure  

 完了する

クライアントがロルファーに頼りきってしまう状況は,ロルフィングで目指すゴールではありません。せっかく,内側から身体自らがバランスをとろうとする力が発動し,自立できる機会をロルファーが奪ってはいけないのです。クライアントの力を信じるのであれば,他者の手助けに依存しなくても,OKであることを確認し,自信を取り戻す必要があります。
いい終わりを迎えることが,次に進むための新しい始まりにつながります。



 実際にロルフィングで行うことは?
こちらから